嚥下障害100の疑問
病院や施設、そして在宅の現場で数多くの「食べること・飲み込むこと(摂食嚥下)」の悩みに寄り添うなかで、
私は多くの方々が人知れず涙を流し、深く悩まれている姿を目にしてきました。
- 「ご飯のたびに激しくむせるけれど、どう対応したらいいのかわからない」
- 「一生懸命作った介護食を『いらない』と拒否され、ついイライラして自己嫌悪してしまう」
- 「私のスプーンの運び方が悪くて、誤嚥させてしまったらどうしよう…と不安でたまらない」
24時間365日、休みなく続くおうちでの食事サポートは、本当に孤独で、時に強烈なプレッシャーを伴うものです。
しかし、多くのご家族が「自分がもっと頑張らなければ」と、一人で重い荷物を背負い込んでしまっています。
そんなご家族の肩の荷をスッと下ろし、「大丈夫、あなたのせいじゃないですよ」「もっと手を抜いていいんですよ」と優しく寄り添える道標を作りたい。それが、この本を執筆するきっかけでした。
■ この本の特徴:知りたいことが「1分」でわかる
本書は、専門書のような難しい理論をダラダラと書いた本ではありません。 おうちで直面するリアルな困りごとや素朴な疑問に対し、1問1答形式で100個の答えをギッシリ詰め込みました。
目次を見て、いま困っているページを開けば、今日から実践できる「1ミリの工夫」がすぐに見つかります。
【本書で取り上げている疑問の一例】
- 基本の疑問: なぜ高齢になると、お茶や水でむせやすくなるの?
- 実践テクニック: 誤嚥を防ぐ「あごを引いた姿勢」の正しい作り方は?
- 日々の工夫: 市販のレトルト介護食や栄養ゼリーを上手に頼るコツ
- お薬の悩み: 錠剤や粉薬を嫌がるとき、どうすればスムーズに飲める?
- 深い悩みへの選択: 「胃ろう」や「チューブ栄養」になったら、もう一生大好きなものは食べられないの? 最期の食事の希望はどう確かめる?
■ 一番大切な隠し味は、あなたの「笑顔」です
言語聴覚士として私が一番お伝えしたいのは、完璧な安全や、ミリ単位の正確なとろみの数字を目指すことだけが正解ではない、ということです。
食事は、生きるための「栄養摂取の作業」であると同時に、心が満たされる「人生の楽しみ」です。
たとえ、お口から食べられる量がほんの「スプーンひと匙」になったとしても、食卓をまんなかにして「美味しいね」と目を合わせ、笑顔でおしゃべりを交わす。その温かい心のつながりこそが、何よりも大切な本質です。
そのためには、介助するあなた自身が笑顔でいられることが一番の特効薬になります。手抜きの知恵をたくさん取り入れ、周りのケアマネジャーや専門職を盛大に頼ってください。
■ 最後に
この本が、いまおうちの食卓で不安や孤独と戦っているご家族の手に渡り、少しでも心が軽くなるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
ページをめくったその先で、皆様の大切な人と過ごす時間が、穏やかで優しい「美味しいね」の響きに満ち溢れることを、心から願っております。
ぜひ、お手に取っていただければ幸いです。


