ぱ・ば・まはなぜ早く言える?
赤ちゃんがことばを話し始めるころ、ぱぱ、まま、ばいばいなど、ぱ・ば・まを含む音を早い時期から耳にすることがあります。
一方、さ行やら行などは、もう少し成長してから正しく発音できるようになる子どもが多くいます。
なぜ、ぱ・ば・まは比較的早く言えるのでしょうか。
その理由の一つは、これらの音が両方の唇を使って作る音だからです。
ぱ・ば・まは舌の細かな位置を調整する必要が少なく、赤ちゃんのころから行っている唇の動きを利用して作ることができます。
この記事では、ぱ・ば・まが比較的早く言える理由や、それぞれの音の作り方、子どもの発音が発達していく仕組みについてわかりやすく解説します。
ぱ・ば・まは両唇を使って作る音
ぱ・ば・まには共通点があります。
どの音も、上唇と下唇を閉じて作る音です。
このように両方の唇を使って作る子音を両唇音といいます。
ぱを発音するときには、いったん唇を閉じて口の中に空気をため、その後に唇を開いて空気を出します。
ばも基本的な唇の動きはぱと似ていますが、声帯を振動させながら音を作ります。
までは唇を閉じたまま、鼻から空気を出します。
音の作り方には違いがありますが、いずれも両方の唇を閉じるという共通した動きがあります。
舌の細かな動きが少ない
ぱ・ば・まが比較的早く現れる理由の一つとして、舌の細かな位置調整をあまり必要としないことが挙げられます。
例えば、さ行を作るためには、舌を適切な位置に保ちながら狭い隙間を作り、そこへ息を流す必要があります。
ら行では、舌先を上あご付近へ素早く接触させます。
このような音では、舌を細かくコントロールしなければなりません。
一方、ぱ・ば・までは、主に唇の開閉によって音を作ります。
赤ちゃんにとって比較的行いやすい動きを利用できるため、早い時期から発音に現れやすいと考えられます。
赤ちゃんは早い時期から唇を使っている
赤ちゃんはことばを話し始めるより前から、唇をさまざまな場面で使っています。
例えば、母乳やミルクを飲むときにも唇を使います。
成長すると、食べ物を口からこぼれにくくしたり、スプーンから食べ物を取り込んだりする際にも唇を使います。
ただし、食べるときの動きと発音するときの動きは同じものではありません。
食事の動きがそのまま発音になるわけではありませんが、赤ちゃんは発話が始まる前から唇を動かす経験をたくさんしています。
こうした身体の発達を背景として、唇を使う音も発声の中に現れていきます。
喃語でも、ばばば・まままがみられる
赤ちゃんは意味のあることばを話す前に、さまざまな声を出します。
生後しばらくすると、子音と母音を組み合わせた音を繰り返すようになります。
例えば、
・ばばば
・ままま
・ぱぱぱ
などです。
このような発声は喃語の一部としてみられます。
この段階では、まままと言っていても、お母さんを意味するママということばを話しているとは限りません。
まず音として繰り返し発声し、その後、周囲の人とのやり取りを通して特定の音の並びと意味が結びついていきます。
同じ動きを繰り返しやすい
ばばば、ままま、ぱぱぱのような音には、同じような口の動きを繰り返すという特徴があります。
唇を閉じて開くという動作を繰り返すことで、同じ音節を連続して発声できます。
複雑な舌の位置を次々に切り替える必要がないため、発声の発達初期にも現れやすい音の並びです。
赤ちゃんは、このような繰り返しの発声をたくさん経験しながら、少しずつ使える音を増やしていきます。
ぱ・ば・まの違いはどこにある?
ぱ・ば・まはすべて唇を閉じて作りますが、同じ音ではありません。
大きな違いは、声帯の振動と空気の通り道です。
ぱでは、唇を閉じて空気をため、唇を開くときに息を出します。
ばでは、ぱと似た動きをしながら声帯を振動させます。
までは、唇を閉じた状態で声を出し、空気を鼻へ通します。
簡単に整理すると、
・ぱ:唇を閉じてから息を出す
・ば:唇を閉じてから声を伴って音を出す
・ま:唇を閉じたまま鼻へ空気を通す
という違いがあります。
子どもは発声経験を重ねながら、このような音の違いも少しずつ使い分けるようになります。
母音と組み合わせてことばになる
ぱ・ば・まなどの子音は、母音と組み合わせることで日本語のさまざまな音節になります。
例えば、
・ぱ+あ → ぱ
・ば+あ → ば
・ま+あ → ま
というように、子音のあとに母音が続きます。
母音は赤ちゃんの発声でも早い時期から現れる音です。
そのため、早くから使われる母音と比較的作りやすい両唇音が組み合わさり、ばばば、まままなどの発声につながっていきます。
大人の口元を見てわかりやすい
ぱ・ば・まには、発音するときの動きを目で確認しやすいという特徴もあります。
これらの音を発音するときには、唇が閉じたり開いたりする様子が外からよく見えます。
一方、か行のように舌の奥を使う音は、相手の口元を見ても舌がどのように動いているのかわかりにくい音です。
赤ちゃんは大人の声を聞くだけでなく、顔や口元にも注目しながらコミュニケーションを取ります。
ぱ・ば・まは口の動きが視覚的にもわかりやすいため、大人の発声をまねする際の手がかりを得やすい音と考えられます。
ママ・パパが早く言えるのは意味も関係している
ママやパパは、子どもの初期のことばとしてよく知られています。
発音しやすい音で構成されていることに加えて、日常生活の中で何度も聞くことも関係しています。
周囲の大人が、ママだよ、パパだよなどと繰り返し話しかけることで、子どもは音と人との関係を学んでいきます。
また、子どもが偶然まま、ぱぱのような発声をしたときに、大人が反応することもあります。
このようなコミュニケーションの積み重ねによって、単なる音の繰り返しから意味のあることばへ発達していきます。
早く言える音にも個人差がある
ぱ・ば・まは比較的早い時期から現れやすい音ですが、すべての子どもが同じ順番で発音を身につけるわけではありません。
最初に話すことばも子どもによって異なります。
また、ある音が喃語として出ていることと、その音を意味のあることばの中で正しく使えることも同じではありません。
ばばばと発声できていても、すべての単語でばを安定して使えるとは限りません。
子どもの発音を見るときには、一つの音が出ているかだけでなく、ことばや会話の中でどのように使われているかを見ることが大切です。
ぱ・ば・まが言えない場合は心配?
幼い子どもがぱ・ば・まをうまく発音できないからといって、それだけで構音障害と判断することはできません。
特にことばを話し始めたばかりの時期には、使える音の種類に大きな個人差があります。
発音だけではなく、
・ことばが少しずつ増えているか
・大人の話しかけを理解しているか
・声やことばで伝えようとしているか
・指さしや身振りを使っているか
・呼びかけや音への反応があるか
など、ことばやコミュニケーション全体を見ることが大切です。
発音以外にも気になることがある場合には、乳幼児健診や発達相談などで相談してみてもよいでしょう。
早く言える音を練習させる必要はない
ぱ・ば・まが比較的発音しやすいと知ると、赤ちゃんのころから練習させたほうがよいのではないかと思うかもしれません。
しかし、特別な発音練習をする必要はありません。
日常生活の中で、子どもと顔を合わせながら話したり、声を出したときに大人が反応したりすることが大切です。
例えば、子どもがばばばと声を出したら、大人も楽しそうに声を返すことで、声を使ったやり取りにつながります。
正しい音を教えることより、声を出すと相手が応えてくれるというコミュニケーションの楽しさを経験することが重要です。
まとめ
ぱ・ば・まは、子どもの発音の中でも比較的早い時期から現れやすい音です。
これらの音はすべて両方の唇を使って作る両唇音で、舌の細かな位置調整をあまり必要としません。
赤ちゃんの喃語でも、ばばば、ままま、ぱぱぱのように同じ音を繰り返す発声がみられます。
また、唇の開閉は外から見えやすく、大人の口元をまねする際にも手がかりになります。
ただし、ぱ・ば・まが早く現れやすいからといって、すべての子どもが同じ時期や順番で発音するわけではありません。
発音の発達には個人差があります。
幼い時期には特定の音が言えるかだけを見るのではなく、ことばが増えているか、相手へ伝えようとしているか、ことばを理解しているかなど、コミュニケーション全体の発達を見ることが大切です。

