聴覚障害は遺伝するの?
「家族に難聴の人がいるので、子どもにも遺伝するのでしょうか?」
「親が難聴だと、必ず子どもも難聴になりますか?」
このような不安を抱える方は少なくありません。
結論から言うと、聴覚障害の中には遺伝が関係するものもありますが、すべての難聴が遺伝するわけではありません。
また、遺伝する可能性がある場合でも、「必ず子どもに受け継がれる」というわけではありません。
この記事では、聴覚障害と遺伝の関係について、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
難聴にはさまざまな原因がある
難聴の原因は一つではありません。
例えば、
- 生まれつきの耳の発達の違い
- 遺伝的な要因
- 加齢
- 中耳炎などの病気
- 突発性難聴
- 大きな音による騒音性難聴
- 薬の副作用
など、さまざまな原因があります。
そのため、難聴だからといって、すべてが遺伝によるものとは限りません。
遺伝が関係する難聴もある
生まれつきの難聴(先天性難聴)の中には、遺伝が関係しているものがあります。
先天性難聴の原因の半数以上は、遺伝子の変化が関係していると考えられています。
ただし、遺伝子の変化があっても、
- 聞こえ方
- 難聴の程度
- 進行の仕方
は人によって異なります。
同じ家族でも症状が異なることは珍しくありません。
家族に難聴の人がいなくても起こる
「家族に難聴の人はいないから安心」とは言い切れません。
遺伝性難聴の中には、初めてその家系で現れる場合や、両親には症状がなくても、お子さんに現れる場合もあります。
また、遺伝とは関係なく、
- 妊娠中の感染症
- 出生時のトラブル
- 新生児期の病気
などが原因となることもあります。
親が難聴なら必ず遺伝するの?
答えは「必ずではありません」。遺伝の仕組みにはさまざまなタイプがあり、
- 遺伝しやすいもの
- 遺伝する可能性が低いもの
- 両親から遺伝子を受け継いだ場合にだけ発症するもの
などがあります。
そのため、「親が難聴だから、子どもも必ず難聴になる」とは言えません。
逆に、家族に難聴の方がいなくても難聴になることもあります。
遺伝するのは「難聴」だけではない
遺伝性難聴には、耳だけに症状が現れるものもあれば、
- 視力
- 腎臓
- 心臓
など、ほかの臓器にも影響する病気の一症状として難聴が現れることもあります。
そのため、必要に応じて耳だけでなく全身の状態も確認することがあります。
遺伝が心配なときは相談を
家族に難聴の方がいる場合や、「遺伝する可能性があるのでは」と心配な場合は、耳鼻咽喉科で相談しましょう。
必要に応じて、
- 詳しい聴力検査
- 遺伝学的検査
- 遺伝カウンセリング
などが行われることがあります。
遺伝カウンセリングでは、検査を受けるかどうかも含め、一人ひとりの状況に応じて丁寧に説明を受けることができます。
赤ちゃんの聞こえは早く確認できる
現在では、多くの医療機関で新生児聴覚スクリーニングが行われています。
もし難聴が見つかった場合でも、
- 補聴器
- 人工内耳
- 言語聴覚士による支援
- 療育
などを早い時期から始めることで、言葉やコミュニケーションの発達を支えることが期待できます。
遺伝の有無にかかわらず、早期発見・早期支援がとても大切です。
「遺伝するか」よりも「早く気づくこと」が大切
保護者の方の中には、「遺伝させてしまったのではないか」と自分を責めてしまう方もいます。
しかし、難聴の原因はさまざまであり、誰かの責任ではありません。
また、現在は聞こえを支える方法や支援制度が充実しています。
大切なのは、原因を必要以上に責めることではなく、早く気づき、お子さんに合った支援につなげることです。
まとめ
聴覚障害の中には遺伝が関係するものもありますが、すべての難聴が遺伝するわけではありません。
また、親が難聴だからといって、必ず子どもに遺伝するわけでもありません。
難聴の原因はさまざまであり、遺伝だけでなく病気や加齢、生活環境なども関係します。
遺伝について不安がある場合は、一人で悩まず、耳鼻咽喉科や遺伝カウンセリングで相談しましょう。
そして、赤ちゃんやお子さんの聞こえに気になることがあれば、早めに検査を受け、必要に応じて適切な支援につなげることが大切です。

