脳の損傷部位で症状が変わる理由|高次脳機能障害と脳の働きの関係
高次脳機能障害について調べていると、
「前頭葉が損傷すると注意障害が起こる」
「右脳の損傷で半側空間無視が起こる」
といった説明を目にすることがあります。
同じ脳卒中や頭部外傷でも、人によって現れる症状が異なるのはなぜなのでしょうか。
その理由は、脳のそれぞれの場所に異なる役割があるからです。
この記事では、脳の損傷部位によって症状が変わる理由についてわかりやすく解説します。
脳には役割分担がある
私たちの脳は、一つの場所ですべての働きを行っているわけではありません。
脳の各部位がそれぞれ専門の役割を持ち、協力しながら働いています。
例えば、
- 言葉を理解する場所
- 記憶を担当する場所
- 注意を担当する場所
- 視覚を担当する場所
などがあります。
そのため、どの場所が損傷したかによって症状が変わるのです。
前頭葉が損傷した場合
前頭葉は「脳の司令塔」とも呼ばれています。
主な役割は、
- 判断する
- 計画する
- 集中する
- 感情をコントロールする
ことです。
起こりやすい症状
- 注意障害
- 遂行機能障害
- 意欲低下
- 社会的行動障害
例えば、
「何から始めればいいか分からない」
「怒りっぽくなった」
といった症状がみられることがあります。
側頭葉が損傷した場合
側頭葉は、
- 記憶
- 言葉の理解
- 音の認識
に関わっています。
起こりやすい症状
- 記憶障害
- 失語症
- 失認
例えば、
- 約束を忘れる
- 話の内容が理解しにくい
といった症状が現れることがあります。
頭頂葉が損傷した場合
頭頂葉は、
- 感覚の処理
- 空間認識
- 身体の位置の把握
などを担当しています。
起こりやすい症状
- 半側空間無視
- 失行
- 失認
例えば、
- 食事の左半分を残す
- ボタンをうまく留められない
などの症状がみられることがあります。
後頭葉が損傷した場合
後頭葉は視覚情報を処理する場所です。
起こりやすい症状
- 視野障害
- 視覚失認
- 相貌失認
例えば、
- 左右どちらかが見えない
- 人の顔が分からない
といった症状が現れることがあります。
右脳と左脳でも症状は変わる
脳は左右でも得意な役割が異なります。
左脳の損傷
- 失語症
- 読み書きの障害
- 計算障害
などが起こりやすくなります。
右脳の損傷
- 半側空間無視
- 地誌的障害
- 表情理解の障害
などが起こりやすくなります。
同じ脳卒中でも、右脳か左脳かによって症状は大きく異なります。
同じ場所が損傷しても症状が違うことがある
脳の損傷部位が似ていても、症状がまったく同じになるとは限りません。
その理由として、
- 損傷の大きさ
- 年齢
- 発症前の能力
- 回復の程度
などが影響します。
また、脳はネットワークとして働いているため、一つの部位だけでは説明できないこともあります。
高次脳機能障害は「脳の地図」を知ると理解しやすい
高次脳機能障害の症状は複雑に見えることがあります。
しかし、
- 前頭葉=計画や判断
- 側頭葉=記憶や言葉
- 頭頂葉=空間認識
- 後頭葉=視覚
という大まかな役割を知ることで、症状を理解しやすくなります。
ご本人やご家族にとっても、「なぜこの症状が起きているのか」を理解する助けになります。
症状だけで損傷部位を決めることはできない
一方で、
「物忘れがあるから側頭葉の障害だ」
「怒りっぽいから前頭葉の障害だ」
と単純には言えません。
実際には複数の部位が関係していることも多く、正確な評価には医師や専門職による診察が必要です。
症状だけで自己判断するのではなく、専門家の評価を受けることが大切です。
まとめ
脳の損傷部位によって症状が変わるのは、脳の各部位が異なる役割を持っているためです。
例えば、
- 前頭葉:判断・計画・感情コントロール
- 側頭葉:記憶・言葉の理解
- 頭頂葉:空間認識・感覚
- 後頭葉:視覚
といった働きがあります。
高次脳機能障害を理解するためには、「脳のどこがどんな役割を持っているのか」を知ることが大切です。
症状の背景を理解することで、ご本人やご家族が適切な支援につながる第一歩になります。

