名前や住所が書けなくなる理由
失語症になると、
「自分の名前が書けなくなった」
「住所を書こうとしても思い出せない」
「字は書けるのに途中で止まってしまう」
といった症状が現れることがあります。
名前や住所は毎日のように使っていた情報です。そのため、ご本人やご家族は、
「自分の名前まで書けなくなるなんて…」と大きなショックを受けることがあります。
しかし、これは珍しいことではなく、失語症でみられる症状の一つです。
この記事では、名前や住所が書けなくなる理由についてわかりやすく解説します。
名前や住所を忘れたわけではない
まず知っておいていただきたいのは、
名前や住所が書けなくなっても、必ずしも忘れてしまったわけではないということです。
例えば、
- 自分の名前を言える
- 住所を口頭で説明できる
にもかかわらず、紙に書こうとすると書けないことがあります。
これは記憶の問題ではなく、文字として表現する力の障害による場合があります。
書くためには複数の作業が必要
名前を書くという簡単な作業にも、
- 何を書くか思い出す
- 文字を頭に浮かべる
- 正しい順番で並べる
- 手を動かして書く
という複数の工程があります。
失語症では、この過程のどこかに障害が生じるため、書くことが難しくなります。
漢字が思い出せなくなる
特によくみられるのが、漢字が思い出せないという症状です。
例えば、
「山田太郎」という名前を知っていても、
- 「山」は書ける
- 「田」が出てこない
といったことがあります。
住所でも、
- 市町村名
- 地名
の漢字が思い出せなくなることがあります。
文字の形が頭に浮かばない
失語症では、文字の形そのものが思い出せなくなることがあります。
例えば、「病」という字を書こうとしても、どのような形だったか思い出せない状態です。
そのため、途中まで書いて止まることがあります。
話せても書けないことがある
失語症では、話す力と書く力が同じように障害されるとは限りません。
例えば、「住所を言ってください」と言われると答えられるのに、
「住所を書いてください」と言われると書けないことがあります。
これは書字機能がより強く障害されているためです。
緊張するとさらに書けなくなる
名前や住所を書く場面は、
- 病院の受付
- 銀行の手続き
- 役所の書類
などが多くあります。
こうした場面では緊張しやすく、普段より書けなくなることがあります。
失語症の方にとっては大きなプレッシャーになることがあります。
認知症とは違うの?
名前や住所が書けないと、「認知症ではないか」と心配されることがあります。
失語症
文字として表現することが難しい
認知症
名前や住所そのものを忘れてしまうことがある
という違いがあります。
もちろん両方を合併することもありますが、失語症だけでも名前や住所が書けなくなることがあります。
リハビリで改善する可能性がある
名前や住所を書く練習は、書字リハビリの中でもよく行われます。
例えば、
- なぞり書き
- 写字
- 反復練習
- 住所カードの活用
などです。
日常生活でよく使う情報であるため、繰り返し練習することで改善することがあります。
家族ができる工夫
名前や住所を書くことが難しい場合は、
- 見本を用意する
- 名前カードを持ち歩く
- メモを活用する
といった工夫が役立ちます。
また、「どうして書けないの?」と責めるのではなく、
「書くことが難しくなっているんだな」と理解することが大切です。
まとめ
失語症では、自分の名前や住所が書けなくなることがあります。
これは、
- 名前や住所を忘れた
- 手が動かない
ということではなく、文字を思い出し、書くための脳の働きが障害されているためです。
特に漢字が思い出せなくなったり、文字の形が浮かばなくなったりすることがあります。
適切なリハビリや工夫によって改善することもあるため、焦らず取り組むことが大切です。

