子どもの発音はどのように発達する?
子どもは、ことばを話し始めたときから大人と同じようにすべての音を正しく発音できるわけではありません。
最初は発音しやすい音を使いながら、成長とともに少しずつさまざまな音を身につけていきます。
そのため、小さな子どもが一部の音を別の音に置き換えたり、うまく言えなかったりすることは珍しくありません。
発音の発達には、舌や唇を動かす力だけでなく、周囲のことばを聞く力や、ことばの音を区別する力、たくさん話す経験なども関係しています。
この記事では、子どもの発音がどのように発達していくのか、発音を身につける仕組みや発達を見るときのポイントについてわかりやすく解説します。
発音は少しずつ身につけていく
赤ちゃんは生まれた直後から泣き声などの声を出しますが、最初から意味のあることばを話すわけではありません。
成長すると、あー、うーなどの声を出したり、ばばば、まままなど同じような音を繰り返したりするようになります。
さらに発達すると、周囲の人が話していることばをまねしながら、少しずつ意味のあることばを話すようになります。
このような経験を重ねる中で、日本語で使われるさまざまな音も身につけていきます。
発音は、ことばの発達とともに少しずつ完成していくものです。
すべての音が同時に完成するわけではない
日本語には、さまざまな子音や母音があります。
これらの音は、すべて同じ方法で作られているわけではありません。
唇を使う音、舌の先を使う音、舌の奥を使う音、狭い隙間から空気を流す音など、それぞれ作り方が異なります。
そのため、子どもが音を身につける時期にも違いがあります。
比較的作りやすい音は早くから安定しやすく、舌や空気の流れを細かく調整する必要がある音は、正しく言えるようになるまで時間がかかることがあります。
母音は発音の土台になる
日本語には、あ・い・う・え・おの5つの母音があります。
母音は日本語のことばを作る基本的な音であり、子どもの発音の中でも比較的早い段階から使われます。
母音では、舌や口の形を変えることで、それぞれ異なる音を作ります。
例えば、あとうでは、口の開き方や舌の位置が異なります。
子どもは声を出したり、大人の発音を聞いたりする経験を重ねながら、このような音の違いを身につけていきます。
子音は音によって作り方が大きく違う
子音では、舌や唇、空気の流れなどをさまざまな方法で調整します。
例えば、ま行では唇を閉じて音を作ります。
た行では舌の前方を使います。
か行では舌の奥を使います。
さ行では舌と上あごなどの間に狭い隙間を作り、そこへ空気を流します。
このように音によって必要な動きが異なるため、子どもによって得意な音と苦手な音がみられることがあります。
発音しやすい音から身につけていく
子どもの発音では、比較的単純な動きで作れる音が早く安定する傾向があります。
一方、舌の細かな位置調整や空気の流れのコントロールが必要な音は、習得に時間がかかることがあります。
そのため、ある時期にはほとんどの音を正しく言えていても、一部の音だけ間違えていることがあります。
例えば、さ行やら行など、比較的遅い時期まで発達が続く音があります。
特定の音だけ言えない場合でも、発達途中であれば成長とともに正しく発音できるようになることがあります。
言えない音を別の音で代用することがある
まだ正しく発音できない音があると、子どもは自分が発音しやすい音を使ってことばを話すことがあります。
例えば、さ行をうまく発音できない子どもが、さかなをたかなのように発音することがあります。
また、か行をた行として発音することもあります。
このように、本来の音を別の音として発音することを置き換えといいます。
発音の発達途中では、このような置き換えがみられることがあります。
成長して正しい音を作れるようになると、徐々に置き換えが減っていく場合があります。
音を省略することもある
小さな子どもでは、発音することが難しい音や音の並びを省略することがあります。
特に長いことばや複雑なことばでは、すべての音を正しい順番で発音することが難しくなることがあります。
このような誤りも、発音やことばの音を扱う力が発達するにつれて減っていくことがあります。
以前より長いことばを正確に言えるようになったかなども、発音の発達を見る一つのポイントになります。
舌や唇の動きも発達する
発音には、舌、唇、あごなどの動きが関係しています。
子どもは成長するにつれて、これらをより細かく協調させて動かせるようになります。
例えば、舌の先だけを使ったり、舌の奥を持ち上げたり、唇を素早く開閉したりするなど、音によって異なる動きが必要になります。
発音では、単に舌を強く動かせればよいわけではありません。
必要な場所へ適切なタイミングで動かし、呼吸や発声と組み合わせることが重要です。
こうした細かな調整も、さまざまな発音を身につける中で発達していきます。
聞く力も発音の発達に関係する
発音を身につけるためには、自分で口を動かすだけではなく、周囲の人が話すことばを聞くことも重要です。
子どもは大人の話すことばを繰り返し聞きながら、それぞれの音の違いを学んでいきます。
さらに、自分が発音した音と周囲の人の音を聞き比べながら、少しずつ発音を調整していきます。
そのため、聞こえにくさがある場合には、ことばの音を十分に聞き取ることが難しくなり、発音の発達に影響することがあります。
発音だけでなく聞こえについても気になる場合には、耳鼻咽喉科などへの相談を検討します。
音の違いに気づく力も育っていく
子どもは成長するにつれて、ことばがさまざまな音からできていることに気づくようになります。
例えば、さかなとたかなでは最初の音が違うことを聞き分けたり、ことばの最初にどのような音があるのかを意識したりできるようになります。
このような、ことばの音に注目する力も発音の発達と関係しています。
自分の発音と大人の発音が違うことに気づくようになると、自分で言い直そうとする子どももいます。
ただし、音の違いがわかっていても、舌などをうまく動かせず正しく発音できないこともあります。
聞き分けることと実際に発音することは、同じではありません。
たくさん話す経験も大切
発音は、日常生活の中でさまざまなことばを聞いたり話したりすることで発達していきます。
家族との会話、絵本の読み聞かせ、友達との遊びなど、さまざまなコミュニケーションの経験がことばの発達を支えます。
子どもは、伝えたいことを話し、相手に伝わる経験を繰り返す中で、ことばを使う力を伸ばしていきます。
発音を育てるために、家庭で難しい発音練習をたくさん行う必要があるわけではありません。
まずは子どもが楽しくことばを使える環境を作ることが大切です。
発音の発達には個人差がある
発音の発達する速さには個人差があります。
同じ年齢でも、ほとんどの音を正しく言える子どももいれば、一部の音がまだうまく言えない子どももいます。
また、ある音を一度正しく言えたからといって、その日からすべての場面で正しく発音できるようになるとは限りません。
単音では言えても単語では間違える、単語では言えても会話になると元の発音に戻るということがあります。
少しずつ正しく言える場面が増え、最終的に日常会話でも自然に使えるようになっていきます。
正しい発音は段階的に定着していく
新しい音を身につける過程では、最初から会話の中で自然に使えるとは限りません。
まず偶然正しい音が出るようになり、その後、意識すれば正しく言えるようになることがあります。
さらに、単語や文の中でも正しく発音できるようになり、最終的には意識しなくても会話で使えるようになります。
つまり、正しい音が一度出たことと、その音を完全に獲得したことは同じではありません。
子どもの発音を見るときには、正しい音が出るかだけではなく、どのような場面で安定して使えているのかを見ることが大切です。
発音を何度も訂正する必要はない
子どもが発音を間違えると、正しく言わせたほうが発音の発達につながるのではないかと考えることがあります。
しかし、まだその音を発音する準備が整っていない場合には、何度言い直しても正しく発音できないことがあります。
例えば、子どもがたかなと言った場合に、さかなでしょ、もう一度さかなと言ってみて、と繰り返し練習させる必要はありません。
大人が、そうだね、さかながいるね、などと自然な会話の中で正しい発音を聞かせる方法があります。
発音の正確さだけに注目するのではなく、子どもが伝えようとしている内容を受け止めることが大切です。
発音の発達を見るときのポイント
子どもの発音が順調に発達しているか気になる場合には、現在の発音だけではなく、以前からどのように変化しているかを見ることが大切です。
例えば、次のような点を確認してみましょう。
・以前より正しく言える音が増えているか
・発音の誤りが少しずつ減っているか
・正しく言える単語が増えているか
・長いことばも言えるようになってきたか
・会話が以前より聞き取りやすくなっているか
・家族以外の人にも伝わることが増えているか
・本人が楽しく会話できているか
数週間程度の短い期間だけで判断するのではなく、発音がどのように変化しているのかを見ることが大切です。
発音の発達が気になる場合は相談してもよい
子どもの発音には個人差がありますが、発音の誤りが長く変化していない場合や、年齢に比べて会話がかなり聞き取りにくい場合には、専門家へ相談する方法があります。
また、特徴的な音の歪みがある場合や、本人が発音を気にしている場合にも相談を検討してよいでしょう。
子どもの発音については、言語聴覚士がいる医療機関や療育機関、地域の発達相談などで相談できる場合があります。
専門家への相談は、必ず訓練を始めるためのものではありません。
現在の発音が発達途中として考えられるのか、経過を見てよいのかを確認する目的でも相談できます。
まとめ
子どもの発音は、ことばを話し始めてから少しずつ発達していきます。
すべての音を同時に身につけるわけではなく、比較的発音しやすい音から、舌や空気の流れを細かく調整する難しい音へと、徐々に発音できる音が増えていきます。
発音の発達途中では、難しい音を別の音に置き換えたり、一部の音を省略したりすることがあります。
また、発音の発達には舌や唇の動きだけでなく、聞く力、ことばの音を区別する力、日常生活で話す経験なども関係しています。
発音には個人差があるため、一つの音が言えないことだけで問題があると判断する必要はありません。
以前より正しく言える音が増えているか、会話が聞き取りやすくなっているかなど、発達の変化を見ることが大切です。
発音の誤りが長く続いている場合や、会話がかなり聞き取りにくい場合、本人が発音を気にしている場合には、言語聴覚士などの専門家へ相談することも検討しましょう。

