注意障害とは?
脳卒中や頭部外傷の後、「話を聞いていてもすぐに気が散る」「同じミスを繰り返す」「以前より集中できなくなった」と感じることがあります。その原因の一つが注意障害です。
注意障害は、高次脳機能障害の中でも比較的よくみられる症状であり、日常生活や仕事に大きな影響を与えることがあります。しかし、見た目では分かりにくいため、ご本人もご家族も気づきにくいことがあります。
この記事では、注意障害とはどのような症状なのか、なぜ起こるのか、日常生活ではどのような困りごとが生じるのかを、言語聴覚士の視点からわかりやすく解説します。
注意障害とは?
注意障害とは、必要なことに意識を向けたり、その状態を維持したりすることが難しくなる状態です。
私たちは普段、無意識のうちに周囲の情報の中から必要なものを選び、集中し続けています。
例えば、
- 会話の内容を聞く
- テレビを見る
- 料理をする
- 買い物をする
- 車を運転する
といった行動には、すべて「注意」の働きが必要です。
脳に損傷を受けると、この注意の機能が低下し、以前は問題なくできていたことが難しくなることがあります。
「注意」とは集中力だけではない
注意というと、「集中力」のことだと思われがちです。
しかし実際には、注意にはいくつかの種類があります。
持続性注意
一定時間集中し続ける力です。
例えば、
- 本を読む
- 会議に参加する
- リハビリに取り組む
などが該当します。
この力が低下すると、すぐ疲れたり集中が途切れたりします。
選択性注意
たくさんの情報の中から必要なものを選ぶ力です。
例えば、
- 騒がしい場所で相手の話を聞く
- スーパーで目的の商品を探す
といった場面で使われます。
転換性注意
注意を切り替える力です。
例えば、
- 電話に出ながら作業を中断する
- 料理中にインターホンへ対応する
などです。
注意障害があると、一つのことから別のことへの切り替えが難しくなります。
分配性注意
複数のことを同時に行う力です。
例えば、
- 会話しながら料理をする
- 運転しながら標識を確認する
などです。
この力が低下すると、「同時に複数のことをする」のが難しくなります。
なぜ注意障害が起こるの?
注意障害は、脳卒中や頭部外傷などによって脳のネットワークが傷つくことで起こります。
特に、
- 前頭葉
- 頭頂葉
- 脳幹
- 注意に関わる神経ネットワーク
などの障害でみられます。
注意は脳の一部分だけで行われる機能ではありません。
脳全体の複数の領域が協力して働くことで成り立っています。
そのため、損傷部位が広い場合や複数の部位に影響がある場合に注意障害が起こりやすくなります。
注意障害でみられる症状
注意障害の現れ方は人によって異なります。
よくみられる症状には次のようなものがあります。
集中力が続かない
作業を始めても途中で疲れてしまいます。
本や新聞を読んでも内容が頭に入らず、長時間取り組めなくなることがあります。
気が散りやすい
テレビの音や周囲の会話など、関係のない刺激に注意が向いてしまいます。
その結果、作業が中断されやすくなります。
ミスが増える
確認不足や見落としが増えます。
例えば、
- 薬を飲み忘れる
- 支払いを忘れる
- 書類の記入漏れが増える
といったことが起こります。
同時に複数のことができない
以前は問題なくできていた家事や仕事でも、複数の作業を同時に行うことが難しくなります。
日常生活への影響
注意障害は、生活のさまざまな場面に影響を及ぼします。
家事
料理中に別のことへ気を取られ、
- 火を消し忘れる
- 調味料を入れ忘れる
などのミスが起こることがあります。
買い物
買う予定だった物を忘れたり、必要のない物を買ってしまったりします。
仕事
作業効率が低下し、
- ケアレスミスが増える
- 指示を聞き漏らす
- 複数業務への対応が難しくなる
ことがあります。
会話
長い話を聞き続けることが難しくなり、話の内容が分からなくなることがあります。
「怠けている」のではありません
注意障害のある方は、
- やる気がない
- 真面目に取り組んでいない
- 怠けている
と誤解されることがあります。
しかし、これは本人の努力不足ではありません。
脳の障害によって注意の機能が低下しているために起こる症状です。
ご本人も「頑張ろう」と思っているのにうまくできず、強いストレスを感じていることがあります。
周囲の理解がとても大切です。
注意障害は改善することがある
注意障害は、脳の回復やリハビリによって改善する可能性があります。
また、
- 静かな環境で作業する
- 一度に一つのことを行う
- メモやチェックリストを活用する
- 十分な休憩を取る
といった工夫によって生活しやすくなることも少なくありません。
症状が残った場合でも、環境調整や代償手段を活用することで生活の質を高めることができます。
まとめ
注意障害とは、必要なことに意識を向けたり集中を続けたりすることが難しくなる症状です。
脳卒中や頭部外傷の後によくみられ、高次脳機能障害の中でも代表的な症状の一つです。
集中力の低下だけでなく、気が散りやすい、ミスが増える、複数のことを同時に行えないなど、さまざまな形で現れます。
見た目では分かりにくい障害ですが、ご本人の努力不足ではありません。まずは症状を正しく理解し、ご本人に合った支援や環境調整を行うことが大切です。

