脳卒中と高次脳機能障害の関係

脳卒中の後、手足の麻痺や言葉の障害はよく知られています。

しかし、退院後になってから

「物忘れが増えた」
「集中できなくなった」
「以前のように仕事ができない」
「性格が変わったように感じる」

といった変化に気づくことがあります。

これらの症状は、高次脳機能障害によるものかもしれません。

この記事では、脳卒中と高次脳機能障害の関係について、言語聴覚士の視点からわかりやすく解説します。

脳卒中とは?

脳卒中とは、脳の血管に異常が起こる病気の総称です。

主に次の3つがあります。

脳梗塞

脳の血管が詰まり、血液が届かなくなる病気です。

脳出血

脳の血管が破れ、脳の中に出血が起こる病気です。

くも膜下出血

脳の表面を走る血管が破れ、脳の周囲に出血する病気です。

これらによって脳細胞が損傷すると、さまざまな後遺症が生じる可能性があります。

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害とは、脳の損傷によって、

  • 記憶する
  • 集中する
  • 計画する
  • 判断する
  • 感情をコントロールする

といった高度な脳の働きが低下した状態です。

手足の麻痺のように見た目では分かりにくいため、「見えない障害」と呼ばれることもあります。

なぜ脳卒中で高次脳機能障害が起こるの?

脳には、それぞれ異なる役割を持つ部位があります。

脳卒中によって特定の部位が損傷すると、その部位が担っていた機能に障害が生じます。

例えば、

  • 記憶に関わる部分が損傷すると記憶障害
  • 注意に関わる部分が損傷すると注意障害
  • 計画や判断に関わる部分が損傷すると遂行機能障害

が現れることがあります。

つまり、高次脳機能障害は脳卒中による脳のダメージが原因で起こる後遺症の一つなのです。

脳卒中後によくみられる高次脳機能障害

記憶障害

新しいことを覚えにくくなる症状です。

  • 約束を忘れる
  • 同じ話を繰り返す
  • 薬を飲み忘れる

などがみられます。

注意障害

集中力や注意力が低下する症状です。

  • ミスが増える
  • 気が散りやすい
  • 長時間の作業が難しい

といった困りごとにつながります。

遂行機能障害

計画を立てたり、順序立てて行動したりすることが難しくなります。

例えば、

  • 料理の段取りが分からない
  • 仕事の優先順位を決められない
  • 複数の作業を同時に進められない

などの症状がみられます。

半側空間無視

脳の損傷によって左右どちらかの空間に気づきにくくなる症状です。

特に右脳の損傷では、左側を見落とすことがあります。

社会的行動障害

感情や行動のコントロールが難しくなることがあります。

  • 怒りっぽくなる
  • 我慢が苦手になる
  • 意欲が低下する

などがみられる場合があります。

麻痺が軽くても高次脳機能障害は起こる

脳卒中というと、手足の麻痺をイメージする方が多いかもしれません。

しかし、高次脳機能障害は麻痺の程度とは必ずしも関係ありません。

歩けるようになり、自分で身の回りのことができるようになっても、

  • 仕事に復帰できない
  • 家事がうまくできない
  • 人間関係でトラブルが増える

といった問題が生じることがあります。

そのため、身体機能だけでなく認知機能の評価も重要です。

退院後に気づくことも多い

高次脳機能障害は、入院中よりも退院後に目立つことがあります。

入院中は、

  • スケジュールが決まっている
  • 医療スタッフが支援している
  • 複雑な判断が少ない

ため、症状が目立ちにくいことがあります。

しかし、自宅に戻ると、

  • 家事
  • 金銭管理
  • 買い物
  • 仕事

などの場面で困難が現れやすくなります。

そのため、「退院してから初めて気づいた」というケースも少なくありません。

リハビリで改善は期待できる?

高次脳機能障害は、適切なリハビリによって改善が期待できます。

また、

  • メモを活用する
  • スマートフォンのアラームを使う
  • 作業を一つずつ行う
  • 周囲の支援を受ける

といった工夫によって生活しやすくなることも多くあります。

回復のスピードには個人差がありますが、発症から数年経っても改善がみられることがあります。

まとめ

脳卒中は高次脳機能障害の最も多い原因です。

脳の損傷によって、

  • 記憶障害
  • 注意障害
  • 遂行機能障害
  • 半側空間無視
  • 社会的行動障害

などの症状が現れることがあります。

高次脳機能障害は見た目では分かりにくい障害ですが、日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼします。

脳卒中後に「以前と何か違う」と感じたときは、高次脳機能障害の可能性も考え、専門職へ相談することが大切です。

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