災害や緊急時に家族で備えておきたいこと
「地震が起きたとき、避難の呼びかけに気付けるか心配です。」
「補聴器の電池や人工内耳の充電は、どのくらい準備しておけばよいのでしょうか。」
地震や台風、大雨などの災害では、避難情報や緊急放送など、さまざまな情報を短時間で受け取る必要があります。
しかし、難聴があると、防災無線やテレビの音声、避難所のアナウンスなどを聞き取れないことがあります。
また、停電によって補聴器や人工内耳の充電ができなくなる可能性も考えておかなければなりません。
だからこそ、災害が起きてから対応するのではなく、「聞こえにくいこと」を前提に家族で準備しておくことが大切です。
この記事では、難聴のある方とその家族が災害や緊急時に備えて準備しておきたいことについて、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
音だけに頼らない防災対策を考えよう
災害時には、防災無線やサイレン、館内放送など、音によって危険を知らせる場面が多くあります。
しかし、難聴のある方は、こうした音に気付かなかったり、音が聞こえても内容まで理解できなかったりすることがあります。
そのため、災害情報を受け取る方法を一つだけにしないことが重要です。
音声だけでなく、スマートフォンの通知、テレビの文字情報、自治体の防災情報など、複数の方法から情報を得られるようにしておきましょう。
スマートフォンの緊急通知を確認しておく
スマートフォンは、難聴のある方にとって重要な防災用品の一つです。
緊急速報や防災アプリでは、音だけでなく文字や画面表示で情報を確認できます。
災害が起こる前に、
- 緊急速報の通知設定
- 自治体の防災情報
- 防災アプリ
- 家族との連絡方法
などを確認しておきましょう。
通知音が聞こえにくい場合は、振動や画面表示なども活用します。
家族の連絡方法を決めておく
大規模な災害では、家族が一緒にいるとは限りません。
仕事中、学校、買い物中など、別々の場所で被災する可能性があります。
そのため、「災害が起きたらどのように連絡を取るか」を事前に決めておきましょう。
例えば、
- LINEなどの文字メッセージを利用する
- 集合場所を決めておく
- 家族以外の連絡先を決めておく
- 災害用伝言サービスの利用方法を確認する
などがあります。
難聴がある場合は、電話だけを連絡手段にしないことがポイントです。
避難場所を家族で確認する
自宅周辺の避難場所や避難経路を家族で確認しておきましょう。
実際に一度歩いてみると、災害時に迷いにくくなります。
また、「自宅にいられない場合は○○小学校に集合する」など、家族の集合場所を決めておくことも大切です。
災害時は通信が不安定になる可能性があるため、連絡が取れなくても行動できるようにしておきましょう。
補聴器の予備電池を準備する
電池式の補聴器を使用している場合は、非常持ち出し袋に予備電池を入れておきましょう。
普段使用している電池の種類やサイズも確認しておきます。
予備電池には使用期限がありますので、非常持ち出し袋に入れたままにせず、定期的に確認して交換することも大切です。
補聴器が使えなくなると、災害時の情報収集やコミュニケーションがさらに難しくなる可能性があります。
充電式補聴器・人工内耳は停電に備える
充電式の補聴器や人工内耳を使用している場合は、停電への備えが重要です。
非常持ち出し袋には、
- 充電器
- 充電ケーブル
- モバイルバッテリー
- 必要な変換アダプター
などを準備しておきましょう。
モバイルバッテリーも長期間使用しないと充電が減るため、定期的に残量を確認します。
補聴器・人工内耳を水から守る
大雨や洪水などの災害では、補聴器や人工内耳の機器が水に濡れる可能性があります。
防水性のあるケースや密閉できる袋を非常持ち出し袋へ入れておくと安心です。
乾燥剤や補聴器用の乾燥ケースなども準備しておくとよいでしょう。
機器によって防水性能は異なるため、普段使用している機器の取り扱い方法を確認しておきましょう。
機器の情報を紙にも残しておく
災害時には、スマートフォンが使えなくなる可能性もあります。
補聴器や人工内耳について、
- メーカー名
- 製品名・型番
- 使用している電池
- 購入した店舗・医療機関
- かかりつけの医療機関
などを紙に書いて非常持ち出し袋へ入れておくと安心です。
本人が説明することが難しい場合にも、支援する人へ情報を伝えやすくなります。
「聞こえにくいこと」を伝えるカードを準備する
避難所では、普段関わりのない人とコミュニケーションを取ることが多くなります。
そのため、「耳が聞こえにくいです」「正面から話してください」「文字で伝えてください」など、必要な配慮を書いたカードを用意しておくと便利です。
スマートフォンに文章を保存しておく方法もありますが、電池切れに備えて紙でも用意しておくと安心です。
家族以外にも聞こえにくさを伝えておく
災害時に、必ず家族が近くにいるとは限りません。
可能であれば、近所の人や地域の支援者など、信頼できる人に「災害時の放送に気付きにくいことがある」と伝えておくことも一つの方法です。
特に一人暮らしの方や高齢者の場合は、地域とのつながりが災害時の助けになることがあります。
夜間の災害も考えておく
就寝時には補聴器や人工内耳の体外装置を外している方も多くいます。
そのため、夜間に火災報知器や警報が鳴っても気付かない可能性があります。
聞こえの状態によっては、光や振動などで知らせる警報装置を検討する方法があります。
「補聴器を外している時間にどうやって危険を知るか」について、家族で考えておきましょう。
避難所では自分から困りごとを伝える
避難所では多くの人が生活するため、周囲の人が難聴に気付いてくれるとは限りません。
「放送が聞こえません」「大切な情報は文字でも教えてください」など、必要な配慮を具体的に伝えましょう。
本人が伝えることが難しい場合には、家族が支援者へ説明することも大切です。
掲示板を定期的に確認する
避難所では、食事の時間や物資の配布、給水、医療支援などについてアナウンスされることがあります。
音声だけでは聞き逃す可能性があるため、掲示板や配布物などを定期的に確認しましょう。
家族がいる場合は、重要な情報を一緒に確認する習慣をつくると安心です。
非常持ち出し袋に入れておきたいもの
一般的な防災用品に加えて、難聴のある方は聞こえを支えるための物品も準備しておきましょう。
例えば、
- 補聴器・人工内耳に必要な予備品
- 予備電池
- 充電器・ケーブル
- モバイルバッテリー
- 防水ケース
- 乾燥用品
- 筆談用のメモ帳・ペン
- 聞こえにくさを伝えるカード
- 機器や医療機関の情報
などがあります。
家族で防災用品を確認するときに、これらも一緒に点検しましょう。
定期的に「防災チェック」をする
防災用品は、一度準備すれば終わりではありません。
補聴器の電池には使用期限があり、モバイルバッテリーも充電が減ります。また、機器を買い替えれば必要なケーブルなども変わることがあります。
半年に一度など家族で確認する日を決めて、
- 電池の使用期限
- モバイルバッテリーの充電
- 防災アプリの設定
- 避難場所
- 家族の連絡先
- 補聴器・人工内耳の情報
などを見直してみましょう。
家族で一度シミュレーションしてみる
準備したものが本当に使えるか、家族で簡単に確認してみるのもおすすめです。
例えば、「夜中に地震が起きて停電したらどうする?」「家族が別々の場所にいたらどこへ集合する?」と具体的な場面を想定してみます。
実際に考えてみると、「充電器はあるけれどモバイルバッテリーがない」「避難場所は知っているけれど家族で集合場所を決めていない」など、足りない準備に気付くことがあります。
言語聴覚士ができる支援
言語聴覚士(ST)は、難聴のある方が災害時にどのような場面で情報を得にくくなるかを一緒に考えることができます。
補聴器や人工内耳の管理方法だけでなく、文字情報の活用、周囲への伝え方、本人に合ったコミュニケーション方法についても助言します。
普段の生活だけでなく、「補聴器が使えない状況でも、どうすれば情報を受け取れるか」まで考えておくことが大切です。
災害が起きる前だからこそできることがある
災害時には、普段できていることができなくなる可能性があります。
補聴器を充電できない、家族と連絡が取れない、避難所のアナウンスが分からないといった状況も考えられます。
その場になってから方法を考えるのではなく、家族であらかじめ「こうなったらこうする」と決めておくことで、災害時の不安を減らすことができます。
まとめ
難聴のある方がいる家庭では、一般的な防災対策に加えて、「音による情報が得られない可能性」を考えた準備が必要です。
スマートフォンの文字情報を利用する、電話以外の家族の連絡方法を決める、補聴器の予備電池や人工内耳の充電手段を準備する、聞こえにくさを伝えるカードを用意するなど、家庭でできる対策はたくさんあります。
また、補聴器を外している夜間や停電時など、普段とは異なる状況についても考えておくことが重要です。
災害が起きてから慌てるのではなく、家族みんなで定期的に防災対策を確認し、聞こえにくさがあっても必要な情報を受け取れる環境を準備しておきましょう。

