聴覚障害と「聞こえている」と「理解できる」は違う?
「声は聞こえているのに、何と言っているか分からない。」
「音は聞こえるのに、会話になると内容が理解できない。」
このような経験をする方は少なくありません。
「聞こえる」と「理解できる」は、同じように思えるかもしれませんが、実は別の能力です。
耳で音を受け取ることと、その音を言葉として理解することには、それぞれ異なる仕組みが働いています。
この記事では、「聞こえている」と「理解できる」の違いについて、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
「聞こえる」とは?
「聞こえる」とは、耳に音が届き、それを感じ取ることです。
例えば、
- 鳥のさえずり
- 車の音
- ドアが閉まる音
- 人の声
など、音が存在していることに気づく状態です。
耳から入った音は、
- 外耳
- 中耳
- 内耳
- 聴神経
を通って脳へ送られます。
この仕組みに問題があると、音そのものが聞こえにくくなります。
「理解できる」とは?
一方、「理解できる」とは、
聞こえてきた音を言葉として意味づけることです。
例えば、誰かが「今日は病院へ行きます。」と言ったとします。
耳には音が届いていても、その音を「今日は」「病院」「行きます」という言葉として認識し、文章の意味を理解できて初めて、「理解できた」といえます。
つまり、理解するためには、耳だけでなく脳の働きも必要なのです。
音は聞こえているのに言葉が分からないことがある
特に感音難聴では、「音は聞こえているけれど、言葉として聞き取りにくい」ということがあります。
例えば、「さかな」という言葉が、「たかな」「なかな」のように聞こえてしまうことがあります。
その結果、音は聞こえていても、言葉の意味が正しく理解できません。
そのため、「聞こえているでしょう?」と言われても、本人は内容が分からず困ってしまうことがあります。
騒がしい場所ではさらに理解しにくくなる
静かな部屋では会話できても、
- レストラン
- 駅
- ショッピングモール
などでは急に聞き取りにくくなる方がいます。
これは、相手の声だけでなく周囲の音も一緒に耳へ入ってくるためです。
聞きたい声だけを選び出すことが難しくなり、言葉の理解がさらに難しくなります。
年齢とともに起こることもある
加齢性難聴では、「聞こえにくい」だけではなく、「言葉がはっきりしない」という訴えもよくみられます。
例えば、「テレビの音は聞こえているのに、会話だけ聞こえない」と言われることがあります。
これは、音量だけの問題ではなく、言葉を聞き分ける力が低下していることも関係しています。
脳の病気でも理解が難しくなることがある
耳に異常がなくても、脳の病気によって言葉の理解が難しくなることがあります。
例えば、
- 失語症
- 聴覚情報を処理する脳の障害
などでは、音は聞こえていても、言葉として理解できないことがあります。
つまり、「聞こえ」と「言葉の理解」は、それぞれ別の仕組みで成り立っているのです。
補聴器をつけても全て解決するわけではない
補聴器は音を大きくすることで、聞こえを助ける機器です。
しかし、言葉を理解する力そのものを回復させるものではありません。
そのため、「音はよく聞こえるようになったけれど、会話はまだ分かりにくい」ということもあります。
このような場合には、
- 補聴器の再調整
- 聞き取りの練習(聴覚リハビリテーション)
- 話す人の工夫
- 周囲の環境調整
などを組み合わせることが大切です。
家族や周囲の理解も大切
聞こえにくい方は、「聞こえているのに返事をしない」と思われることがあります。
しかし実際には、音は聞こえていても、言葉として理解できていないことが少なくありません。
そのため、家族や周囲の方は、
- 正面を向いて話す
- ゆっくり、はっきり話す
- 一度にたくさん話さない
- 必要に応じて文字も活用する
などの工夫をすると、コミュニケーションが取りやすくなります。
まとめ
「聞こえる」と「理解できる」は同じではありません。
「聞こえる」とは耳に音が届くことであり、「理解できる」とは、その音を言葉として意味づけることです。
聴覚障害では、音そのものが聞こえにくくなるだけでなく、言葉を聞き分けたり理解したりすることが難しくなる場合があります。
聞こえにくさで困っているときは、「音が聞こえるか」だけでなく、「言葉が理解できているか」という視点も大切です。
気になる症状があれば、耳鼻咽喉科や言語聴覚士へ相談し、自分に合った支援を受けましょう。

