パートナーが難聴になったときの支え方

「最近、夫が何度も聞き返すようになりました。」

「妻の聞こえが悪くなってから、会話が減った気がします。」

パートナーが難聴になると、本人だけでなく、一緒に生活する人にもさまざまな変化が生じます。

何度も同じことを伝えたり、会話がうまくかみ合わなかったりすることで、お互いにストレスを感じることもあるでしょう。

特に長年一緒に暮らしている夫婦では、「以前は普通に話せていたのに」という変化を受け入れることが難しい場合もあります。

大切なのは、難聴を本人だけの問題として考えるのではなく、二人のコミュニケーションをどのように保っていくかという視点を持つことです。

この記事では、パートナーが難聴になったときの支え方について、言語聴覚士がわかりやすく解説します。


難聴は二人の会話に影響する

難聴になると、単純に音が小さく聞こえるだけではなく、言葉そのものを聞き分けにくくなることがあります。

そのため、本人は真剣に聞いているにもかかわらず、聞き間違えたり、話の内容を十分に理解できなかったりすることがあります。

こうしたことが繰り返されると、パートナーは「ちゃんと話を聞いてくれない」と感じ、本人は「何度も聞き返すのが申し訳ない」と感じることがあります。

難聴による聞き間違いを、性格や態度の問題と考えないことが大切です。


会話が減っていないか確認しよう

聞こえにくくなると、会話そのものを避けるようになる方がいます。

何度も聞き返したり、話についていけなかったりする経験が続くと、「もう聞かなくてもいい」「話しても分からない」と感じてしまうことがあるためです。

一方、パートナー側も何度も説明することに疲れ、必要なことだけを話すようになる場合があります。

気が付かないうちに二人の会話が減っていないか、一度振り返ってみましょう。


「聞こえないこと」を責めない

「さっき言ったでしょう」

「何回言えば分かるの?」

「ちゃんと聞いてよ」

こうした言葉は、聞こえにくい本人を傷つけてしまうことがあります。

本人も好きで聞き間違えているわけではありません。

聞こえなかったときは、「聞いていなかった」と考えるのではなく、「聞き取りにくかったのかもしれない」と考えてみましょう。

お互いのイライラを減らすためにも、難聴そのものと本人の態度を分けて考えることが大切です。


大切な話は環境を整えてから

日常会話であれば多少聞き逃しても大きな問題にならないことがありますが、お金や病院、家族の予定など、大切な話では聞き間違いがトラブルにつながることがあります。

重要な話をするときは、テレビを消し、できるだけ静かな場所で向かい合って話しましょう。

日時や金額など間違えやすい情報は、紙やスマートフォンに書いて共有すると安心です。


二人だけの「伝え方」を決めておく

長く一緒に生活するパートナーだからこそ、二人に合ったコミュニケーション方法を決めておくことができます。

例えば、

  • 大切な話をするときはテレビを消す
  • 別の部屋から話しかけない
  • 聞こえなかったら遠慮せず聞き返す
  • 予定はカレンダーやスマートフォンで共有する
  • 伝わらなければ別の言葉へ言い換える

などです。

毎回その場で対応するよりも、二人の中で簡単なルールを決めておくと、お互いの負担を減らしやすくなります。


本人が困っていることを聞いてみる

家族から見ると聞こえにくそうでも、本人が困っている場面は別のところにあるかもしれません。

例えば、「家ではそれほど困らないけれど、友人との食事では聞き取れない」「病院の説明が分からない」「電話が一番困る」など、人によって困りごとは異なります。

「どのくらい聞こえないの?」ではなく、「どんなときに一番困る?」と聞いてみると、必要な支援を考えやすくなります。


受診を無理に迫らない

本人が聞こえにくさを認めたくない場合、耳鼻咽喉科への受診や補聴器を強く勧めることで、かえって拒否してしまうことがあります。

「耳が悪いから病院へ行って」と言うより、「最近聞き返すことが増えたから、一度聞こえを測ってもらおうか」と提案すると受け入れやすい場合があります。

可能であれば、一緒に受診するのもよいでしょう。


補聴器を使い始めたら一緒に支える

補聴器を使用することになっても、すぐにすべての言葉が聞き取れるようになるわけではありません。

最初は「音がうるさい」「違和感がある」と感じることもあります。

そのようなときに「せっかく買ったのだから使って」と責めるのではなく、どのような音が気になるのかを確認し、必要に応じて調整を受けるよう勧めましょう。

補聴器は本人だけで頑張って慣れるものではなく、周囲の理解も大切です。


外出や人との交流を続けられるようにする

難聴が進むと、人との会話を避けるようになり、外出が減ってしまうことがあります。

例えば、レストランや旅行先などでは周囲の雑音が多く、会話が聞き取りにくくなるためです。

だからといって、すべての外出を諦める必要はありません。

静かな席を選ぶ、聞き取りやすい位置に座る、必要に応じて文字を使うなどの工夫をしながら、二人で楽しめる活動を続けることが大切です。


パートナーが代わりに答えすぎない

病院やお店などで本人が聞き取れないと、パートナーが代わりにすべて答えてしまうことがあります。

もちろん必要な場面では助けることも大切ですが、いつも代わりに答えていると、本人が会話へ参加する機会が減ってしまいます。

まず本人がやり取りできるように待ち、必要なところだけ支えることを意識しましょう。

支えることと、すべてを代わりにすることは同じではありません。


支える側も無理をしすぎない

難聴のあるパートナーを支える側にも負担がかかります。

何度も同じことを伝えたり、大きなテレビの音に悩んだり、外出先で会話を取り持ったりすることが続けば、疲れてしまうこともあります。

「自分が支えなければ」と一人で抱え込む必要はありません。

補聴器や文字情報、音声認識アプリなどを活用し、二人とも楽になる方法を探すことが大切です。


難聴について二人で学ぶ

難聴について本人だけが説明を受けるのではなく、可能であればパートナーも一緒に知識を持つとよいでしょう。

どのような音が聞き取りにくいのか、補聴器には何ができて何が難しいのかを理解すると、「補聴器をしているのになぜ聞こえないの?」といったすれ違いを減らすことができます。

一緒に耳鼻咽喉科や補聴器相談へ行くことも一つの方法です。


言語聴覚士ができる支援

言語聴覚士(ST)は、難聴のある本人だけでなく、パートナーを含めたコミュニケーションについても支援します。

実際にどのような場面で会話が難しくなっているのかを確認し、補聴器や人工内耳の活用、聞き取りやすい環境づくり、二人に合った伝え方などを一緒に考えます。

「本人の聞こえを良くする」という視点だけではなく、「二人の会話を続ける」という視点から支援することも重要です。


これまでと同じ関係を続けるために

難聴になると、生活の中で多少の工夫が必要になることがあります。

しかし、聞こえにくくなったからといって、二人の関係そのものが変わる必要はありません。

補聴器を使う、文字を使う、静かな場所で話すなど、コミュニケーションの方法を少し変えることで、これまでと同じように会話を楽しめることがあります。

大切なのは、「聞こえるように頑張ってもらう」のではなく、「どうすれば二人で伝え合えるか」を一緒に考えることです。


まとめ

パートナーが難聴になると、聞き間違いや聞き返しが増え、本人だけでなく支える側もストレスを感じることがあります。

難聴による聞き取りの問題を本人の性格や態度と考えず、二人のコミュニケーションの問題として考えることが大切です。

静かな場所で話す、予定を文字でも共有する、補聴器を適切に活用するなど、二人に合った方法を取り入れてみましょう。

また、支える側がすべてを背負ったり、本人の代わりに何でも行ったりする必要はありません。

本人とパートナーのどちらか一方だけが頑張るのではなく、お互いの負担を減らしながら、「二人が伝え合える方法」を見つけていくことが、これまでの関係を大切にしながら暮らしていくためのポイントです。

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