小児科・耳鼻科・発達外来の違い
はじめに
「子どもの言葉が遅いときは、小児科に行けばよいのでしょうか?」
「聞こえが心配なら耳鼻科、発達が気になるなら発達外来でしょうか?」
子どもの言葉の発達が気になったとき、どの診療科を受診すればよいのか迷う保護者は少なくありません。
言葉の発達には、聞こえ、体の発達、認知機能、コミュニケーション、生活環境など、さまざまな要素が関係しています。そのため、一つの診療科だけですべてを確認するのではなく、必要に応じて複数の専門家が連携することがあります。
この記事では、小児科・耳鼻咽喉科・発達外来の違いと、それぞれに相談した方がよい場合について解説します。
小児科は子どもの発達を全体的に確認する
小児科は、子どもの病気だけでなく、成長や発達を幅広く診る診療科です。
言葉の発達が気になる場合には、言葉だけを見るのではなく、
- 身長や体重などの身体発育
- 運動発達
- 生活リズム
- 食事や睡眠
- 人との関わり方
- これまでにかかった病気
- 発達全体の様子
などを確認します。
かかりつけの小児科であれば、これまでの成長や健康状態を把握しているため、最初の相談先として利用しやすいでしょう。
小児科で確認した結果、より詳しい評価が必要と判断された場合には、発達外来、児童精神科、耳鼻咽喉科、療育機関などを紹介されることがあります。
小児科への相談が向いている場合
次のような場合は、まず小児科に相談しやすいでしょう。
- 言葉だけでなく、発達全体が気になる
- 運動面や生活面にも気になることがある
- 食事や睡眠の悩みもある
- どこを受診すればよいか分からない
- かかりつけ医に成長全体を見てもらいたい
「言葉の問題かどうか分からない」という段階でも相談できます。
耳鼻咽喉科は聞こえや耳の状態を確認する
子どもが言葉を覚えるためには、周囲の音や話し声が適切に聞こえていることが重要です。
耳鼻咽喉科では、
- 耳あかがたまっていないか
- 中耳炎がないか
- 聴力に問題がないか
- 鼻や喉に問題がないか
などを確認します。
一見すると日常会話が聞こえているように見えても、特定の音や小さな声が聞き取りにくいことがあります。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、言葉の遅れをきっかけに難聴が見つかることがあり、小児科で発達を診てもらっている子どもでも、耳鼻咽喉科を受診した経験がなければ、一度聴力を評価することを勧めています。
また、新生児聴覚スクリーニングで問題がなかった場合でも、その後に難聴が生じたり、当時は見つかりにくかった難聴が明らかになったりする可能性があります。
耳鼻咽喉科への相談が向いている場合
次のような様子がある場合には、耳鼻咽喉科への相談を検討します。
- 名前を呼んでも振り向かないことがある
- 小さな音への反応が少ない
- 聞き返しが多い
- テレビや動画の音量を大きくする
- 後ろからの呼びかけに気づきにくい
- 発音が不明瞭である
- 中耳炎を繰り返している
- 言葉がなかなか増えない
「聞こえているように見えるから大丈夫」と判断せず、気になる場合は一度確認してもらうと安心です。
幼い子どもは一般的な聴力検査が難しいこともありますが、年齢や発達に応じた方法で評価してもらえます。
発達外来は発達の特徴を専門的に評価する
発達外来は、子どもの発達について専門的に診察する外来です。
医療機関によって名称や対象は異なり、
- 小児発達外来
- 発達小児科
- 児童精神科
- 子どものこころ外来
などと呼ばれることがあります。
発達外来では、言葉の発達だけでなく、
- 人とのコミュニケーション
- 視線や表情の使い方
- 遊び方
- 注意や落ち着き
- こだわり
- 感覚の特徴
- 集団生活での困りごと
- 知的発達
などを総合的に確認します。
必要に応じて、発達検査や知能検査、心理検査などが行われることもあります。
国立障害者リハビリテーションセンターの小児科・児童精神科でも、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症などの発達障害について、診断や診療が行われています。
発達外来への相談が向いている場合
次のような場合には、発達外来への相談が考えられます。
- 言葉の遅れに加えて、対人関係も気になる
- 呼びかけへの反応が少ない
- 視線が合いにくい
- 指差しや身ぶりが少ない
- 一人遊びが多い
- 強いこだわりがある
- 落ち着きにくさが目立つ
- 集団生活で困りごとがある
- 園や学校から発達相談を勧められた
- 発達障害の可能性について専門的に相談したい
発達外来を受診することは、発達障害と決めつけることではありません。
子どもの得意なことや苦手なことを整理し、家庭や園でどのように関わるとよいかを考えることも大切な目的です。
3つの診療科の違い
それぞれの役割を簡単に整理すると、次のようになります。
小児科
子どもの健康や成長、発達を全体的に確認します。
「言葉以外も含めて相談したい」「どこへ行けばよいか分からない」という場合の最初の相談先として適しています。
耳鼻咽喉科
耳の状態や聴力を中心に確認します。
「聞こえが心配」「中耳炎を繰り返している」「言葉の遅れの背景に難聴がないか調べたい」という場合に適しています。
発達外来
言葉、コミュニケーション、行動、認知、社会性など、発達の特徴を専門的に評価します。
「言葉以外にも発達上の気になる様子がある」「発達障害との関係を詳しく確認したい」という場合に適しています。
迷ったら、どこから相談すればよい?
受診先に迷った場合は、まず次のいずれかに相談するとよいでしょう。
- かかりつけの小児科
- 市区町村の保健センター
- 乳幼児健診の担当者
そこで子どもの様子を伝えると、必要に応じて耳鼻咽喉科や発達外来などを案内してもらえます。
ただし、明らかに聞こえが気になる場合は、最初から耳鼻咽喉科に相談しても問題ありません。
また、言葉の遅れとともに、視線の合いにくさ、強いこだわり、集団生活での困りごとなどが目立つ場合には、発達外来について小児科や保健センターへ相談するとよいでしょう。
複数の診療科を受診することもある
「小児科を受診したから、耳鼻科には行かなくてよい」
「耳鼻科で問題がなかったから、発達面も問題ない」
とは限りません。
例えば、言葉の遅れがある子どもが、
- 小児科で発達全体を確認する
- 耳鼻咽喉科で聴力を調べる
- 発達外来でコミュニケーションや認知の特徴を詳しく見る
という流れで評価を受けることもあります。
発達障害の支援では、医療だけでなく、保健、福祉、教育などが連携することが重要とされています。
一つの診療科だけで結論を出そうとせず、それぞれの専門性を生かして子どもの全体像を捉えることが大切です。
受診前に整理しておきたいこと
受診するときは、次のような情報を整理しておくと、子どもの様子が伝わりやすくなります。
- 初めて言葉を話した時期
- 現在使っている言葉
- 簡単な指示を理解できるか
- 名前を呼んだときの反応
- 指差しや身ぶりを使うか
- 家庭での遊び方
- 園や学校での様子
- 聞こえについて気になること
- これまでに受けた健診や検査
- 保護者が特に心配していること
可能であれば、家庭での会話や遊びの様子を短い動画に残しておくと、診察時の参考になる場合があります。
ただし、動画を見てもらえるかどうかは医療機関によって異なるため、受付時に確認してください。
すぐに診断がつくとは限らない
子どもの発達は成長とともに変化するため、一度の診察だけでは判断が難しいことがあります。
そのため、
- しばらく経過を見る
- 定期的に発達を確認する
- 園での様子も参考にする
- 療育や言語訓練を受けながら変化を見る
といった対応になることもあります。
診断名を早く決めることだけが目的ではありません。
今の子どもが何に困っているのか、どのような関わりや環境が必要なのかを整理することが大切です。
まとめ
小児科・耳鼻咽喉科・発達外来には、それぞれ異なる役割があります。
- 小児科は、健康や成長、発達を全体的に確認する
- 耳鼻咽喉科は、耳の状態や聞こえを確認する
- 発達外来は、言葉やコミュニケーション、行動などを専門的に評価する
という違いがあります。
受診先に迷う場合は、かかりつけの小児科や自治体の保健センターへ相談するところから始めるとよいでしょう。
言葉の発達にはさまざまな要因が関係するため、必要に応じて複数の診療科や専門機関が連携します。
どこを受診するかだけで悩み続けるよりも、まずは相談しやすい場所に話してみることが、子どもに合った支援へつながる第一歩です。

