本人が飲み込みにくさを自覚しないことはある?
「本人は『普通に食べられている』と言っています。」
「家族から見るとむせているのに、本人は気にしていません。」
「飲み込みにくさを自覚しないことはあるのでしょうか?」
答えは、あります。
実際の臨床でも、「本人は困っていないと言うけれど、家族は心配して受診した」というケースは少なくありません。
嚥下障害では、自分では気づきにくいことや、症状に慣れてしまうことがあります。そのため、ご家族の気づきが早期発見につながることも多くあります。
この記事では、本人が飲み込みにくさを自覚しない理由や、家族が気をつけたいポイントについてわかりやすく解説します。
飲み込みにくさを自覚しないことは珍しくない
嚥下障害があっても、「特に困っていません。」「年齢のせいだから仕方ないです。」と話される方は少なくありません。
しかし、ご家族に話を聞くと、
- 食事中によくむせる
- 食事に時間がかかる
- 食後に咳払いをしている
などの変化がみられることがあります。
つまり、本人と家族で認識が異なることは珍しくありません。
少しずつ進行すると気づきにくい
嚥下障害は、多くの場合、ゆっくり進行します。
例えば、昨日までは普通だったのに、今日突然飲み込めなくなるということは少なく、
少しずつ、
- 食べる速度が遅くなる
- むせる回数が増える
- 食べる量が減る
といった変化が起こります。
毎日少しずつ変化するため、本人はその変化に慣れてしまい、自覚しにくくなることがあります。
「年齢のせい」と思っている
高齢者では、「年を取れば食べにくくなるもの。」と思っている方も多くいます。
そのため、
- むせる
- 食事時間が長くなる
- のどにつかえる感じがする
といった症状があっても、「みんなそういうもの。」と考え、受診しないことがあります。
もちろん加齢による変化はありますが、繰り返す症状は嚥下障害が関係している可能性があります。
不顕性誤嚥では気づくことが難しい
嚥下障害の中でも特に気づきにくいのが、**不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)**です。
不顕性誤嚥とは、食べ物や唾液が気管へ入っても、
- 咳が出ない
- むせない
状態をいいます。
本人には自覚症状がほとんどないため、「普通に食べられている。」と思っていることもあります。
しかし、実際には誤嚥を繰り返し、誤嚥性肺炎につながることがあります。
認知症や脳卒中では自覚しにくいことも
認知症では、飲み込みにくさをうまく言葉で伝えられないことがあります。
また、脳卒中では、障害された部位によっては、自分の障害に気づきにくくなることがあります。
そのため、「本人は何とも言っていないから大丈夫。」とは判断できません。
家族が気づきたいサイン
本人が自覚していなくても、ご家族は次のような変化に気づけることがあります。
- 食事中によくむせる
- 水分で咳き込む
- 食事時間が長くなった
- 食後に声がガラガラになる
- 食後に痰が増える
- 食事量が減った
- 体重が減ってきた
- 発熱を繰り返す
これらは、嚥下障害のサインである可能性があります。
無理に指摘しないことも大切
「飲み込みが悪くなったよ。」
「ちゃんと飲み込んで。」
と繰り返し伝えると、本人が落ち込んだり、不安になったりすることがあります。
まずは、「最近、お茶でむせることが増えたように見えるけれど、大丈夫?」
など、本人の気持ちを尊重しながら話をすることが大切です。
必要に応じて、「一度専門の先生に相談してみよう。」と自然に受診につなげられるとよいでしょう。
気になるときは評価を受けよう
飲み込みにくさが疑われる場合は、
- 食事の観察
- 嚥下内視鏡検査(VE)
- 嚥下造影検査(VF)
などによって、実際の飲み込みの状態を確認できます。
「自覚症状がないから検査は不要」と考えず、客観的な評価を受けることが大切です。
まとめ
嚥下障害があっても、本人が飲み込みにくさを自覚しないことは珍しくありません。
その理由には、
- 少しずつ進行するため気づきにくい
- 年齢のせいと思っている
- 不顕性誤嚥がある
- 認知症や脳卒中の影響
などがあります。
そのため、ご家族が普段の食事の様子を観察することが、早期発見につながります。
「最近少し食べ方が変わったかもしれない」と感じたら、無理に指摘するのではなく、
医療機関で飲み込みの評価を受けることを検討しましょう。
早めの対応が、安全に食べ続けることにつながります。

