段取りが苦手になる理由

脳卒中や頭部外傷の後、

  • 「何から始めればいいか分からない」
  • 「家事が以前のようにできなくなった」
  • 「仕事の手順をうまく組み立てられない」

といった変化がみられることがあります。

ご本人は「やろうと思っているのにうまく進まない」と感じ、ご家族は「なぜ簡単なことができないのだろう」と戸惑うことがあります。

こうした症状の背景には、高次脳機能障害による遂行機能障害が関係している場合があります。

この記事では、なぜ段取りが苦手になるのか、その理由や脳の仕組み、日常生活への影響についてわかりやすく解説します。

段取りとは何だろう?

私たちは日常生活の中で、常に段取りを考えながら行動しています。

例えばカレーを作る場合、

  1. 材料を確認する
  2. 野菜を切る
  3. 肉を炒める
  4. 煮込む
  5. 盛り付ける

という順番があります。

このように、

  • 何をするか決める
  • 順番を考える
  • 必要な準備をする
  • 実行する

という一連の流れが「段取り」です。

健康な人は無意識に行っていますが、実はとても高度な脳の働きなのです。

段取りが苦手になるのは遂行機能が低下するため

段取りが苦手になる大きな理由は、遂行機能の低下です。

遂行機能とは、

  • 計画を立てる
  • 優先順位を決める
  • 行動を組み立てる
  • 結果を確認して修正する

といった能力を指します。

高次脳機能障害によってこの機能が低下すると、目標は分かっていても、そこへ到達するための手順を考えることが難しくなります。

前頭葉の働きが関係している

遂行機能には主に前頭葉が関わっています。

前頭葉は脳の司令塔とも呼ばれ、

  • 計画
  • 判断
  • 問題解決
  • 行動の調整

などを担当しています。

脳卒中や頭部外傷などで前頭葉や関連する神経ネットワークが損傷すると、段取りを組み立てる力が低下することがあります。

「何をすればいいか分からない」が起こる

遂行機能障害では、

「やるべきことは分かるけれど、どこから始めればいいか分からない」

という状態がよくみられます。

例えば、「洗濯をしよう」と思っても、

  • 洗濯物を集める
  • 洗剤を入れる
  • 洗濯機を回す
  • 干す

という流れを整理することが難しくなります。

そのため作業を始められなかったり、途中で止まってしまったりします。

優先順位を決めるのが難しくなる

段取りを立てるためには、何を先に行うべきか判断する必要があります。

しかし遂行機能障害では、この優先順位づけが苦手になります。

例えば、

  • 電話が鳴る
  • 食事の準備をする
  • 来客が来る

といった複数の出来事が重なると混乱しやすくなります。

どれから対応すればよいか分からなくなってしまうのです。

臨機応変な対応が難しくなる

予定通りに進んでいるときは問題なくても、予想外の出来事が起こると対応が難しくなることがあります。

例えば、

  • 材料が足りない
  • 電車が遅れた
  • 必要な書類が見つからない

といった状況です。

健康な人であれば別の方法を考えられますが、遂行機能障害では柔軟な対応が難しくなることがあります。

注意障害や記憶障害が影響していることもある

段取りの苦手さは、遂行機能障害だけで起こるとは限りません。

高次脳機能障害では、

  • 注意障害
  • 記憶障害

を伴うことも少なくありません。

例えば、

  • 手順を覚えられない
  • 作業中に気が散る
  • 何をしていたか忘れる

といった問題があると、段取りよく進めることがさらに難しくなります。

複数の症状が重なっている場合も多いのです。

日常生活でみられる具体例

料理が難しくなる

料理の知識はあるのに、

  • 材料を準備しないまま調理を始める
  • 順番がばらばらになる
  • 同時進行ができない

といったことが起こります。

外出準備に時間がかかる

持ち物を準備したり時間を逆算したりすることが難しくなり、出発が遅れてしまうことがあります。

仕事でミスが増える

  • スケジュール管理
  • 優先順位の判断
  • 複数業務の整理

が難しくなり、以前と同じように仕事を進められなくなることがあります。

本人のやる気の問題ではない

遂行機能障害は、

  • 怠けている
  • やる気がない
  • 真剣ではない

と誤解されることがあります。

しかし、ご本人は決してサボっているわけではありません。

脳の障害によって段取りを考える機能が低下しているためです。

本人も、「どうしてできないのだろう」と悩んでいることが少なくありません。

工夫によって生活しやすくなる

段取りが苦手になっても、工夫によって生活しやすくなることがあります。

例えば、

  • 手順を書き出す
  • チェックリストを使う
  • 作業を小さく分ける
  • 一つずつ順番に行う

といった方法があります。

こうした工夫はリハビリでも活用されています。

まとめ

段取りが苦手になるのは、高次脳機能障害によって遂行機能が低下するためです。

前頭葉や関連する神経ネットワークの障害によって、計画を立てたり優先順位を決めたりすることが難しくなります。

また、注意障害や記憶障害が影響している場合もあります。

これは本人のやる気や努力不足ではなく、脳の障害による症状です。

まずはその特徴を理解し、ご本人に合った工夫や支援を取り入れていくことが大切です。

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