遂行機能障害とは?
脳卒中や頭部外傷の後に、
- 「何から始めればよいか分からない」
- 「計画通りに進められない」
- 「以前ならできていた家事や仕事がうまくできない」
といった変化がみられることがあります。
身体に麻痺がなく、会話も問題なくできるため、一見すると以前と変わらないように見えることもあります。しかし、その背景には高次脳機能障害の一つである遂行機能障害(すいこうきのうしょうがい)が隠れている場合があります。
遂行機能障害は、日常生活や仕事に大きな影響を与える症状の一つです。
この記事では、遂行機能障害とはどのような症状なのか、なぜ起こるのか、どのような困りごとが生じるのかをわかりやすく解説します。
遂行機能とは?
遂行機能とは、目標を達成するために計画を立て、順序よく実行し、状況に応じて修正する力のことです。
私たちは普段、無意識のうちに遂行機能を使っています。
例えば、
- 料理を作る
- 買い物をする
- 旅行の準備をする
- 仕事を進める
といった場面です。これらの活動では、
- 何をするか決める
- 必要な物を準備する
- 順番を考える
- 実際に行動する
- うまくいかないときは修正する
という流れが必要です。
遂行機能障害では、この一連の流れがうまくできなくなります。
遂行機能障害とは?
遂行機能障害とは、計画を立てたり、段取りを考えたり、目的に向かって行動したりすることが難しくなる状態です。
知識や能力が失われているわけではありません。
例えば、
- 料理の作り方は知っている
- 買い物の方法も分かっている
にもかかわらず、実際にやろうとすると混乱してしまいます。
そのため、「できるはずなのにできない」という状態が起こります。
なぜ遂行機能障害が起こるの?
遂行機能には主に前頭葉が関わっています。
特に前頭葉の前方部分は、
- 計画を立てる
- 判断する
- 優先順位を決める
- 行動を調整する
といった働きを担っています。
脳卒中や頭部外傷などによって前頭葉や関連する神経ネットワークが損傷すると、遂行機能障害が起こることがあります。
遂行機能障害でみられる症状
症状の現れ方は人によって異なります。
計画が立てられない
目標は分かっていても、そこへ到達するための手順を考えることが難しくなります。
例えば、「旅行に行く」という目標があっても、
- 切符を予約する
- 荷物を準備する
- 時間を確認する
といった段取りがうまく組めなくなります。
順序立てて行動できない
何から始めればよいか分からなくなることがあります。
料理であれば、
- 材料を切る前に火をつける
- 調味料を準備しないまま調理を始める
といったことが起こる場合があります。
臨機応変な対応が難しい
予定外の出来事が起こると混乱しやすくなります。
例えば、
- 電車が遅れた
- 必要な物が見つからない
といった状況で適切に対応できなくなることがあります。
最後までやり遂げられない
途中で別のことに気を取られたり、何をしていたのか分からなくなったりして、作業を完了できないことがあります。
遂行機能障害は見えにくい障害
遂行機能障害は、外見からは分かりにくい症状です。
会話もできるため、
- 怠けている
- やる気がない
- 真剣に取り組んでいない
と誤解されることがあります。
しかし実際には、脳の障害によって計画や実行の機能が低下している状態です。
ご本人も、「どうしてうまくできないのだろう」と悩んでいることが少なくありません。
日常生活で起こる困りごと
遂行機能障害があると、さまざまな場面で困りごとが生じます。
家事
- 料理の段取りが組めない
- 掃除を最後まで終えられない
- 洗濯の手順を間違える
といったことがあります。
金銭管理
- 支払いの順番が分からない
- 計画的にお金を使えない
ことがあります。
仕事
- 優先順位を決められない
- 締め切り管理が難しい
- 複数の仕事を整理できない
といった問題につながることがあります。
改善する可能性はある?
遂行機能障害は、脳の回復やリハビリによって改善する可能性があります。また、
- 手順を紙に書く
- チェックリストを使う
- 作業を小さく分ける
- 周囲のサポートを受ける
といった工夫によって生活しやすくなることもあります。
症状が残った場合でも、環境調整や代償手段によって困りごとを減らせることは少なくありません。
まとめ
遂行機能障害とは、計画を立てたり、段取りを考えたり、目的に向かって行動したりすることが難しくなる高次脳機能障害の症状です。
前頭葉の損傷などによって起こり、家事や仕事、金銭管理など生活のさまざまな場面に影響を与えます。
見た目では分かりにくいため誤解されやすい症状ですが、本人の努力不足ではありません。
まずは症状を正しく理解し、ご本人に合ったリハビリや支援方法を考えていくことが大切です。

