注意障害とは?
高次脳機能障害の中でも特に生活に影響が出やすいのが「注意障害」です。
家族からは「話を聞いていないように見える」「作業に集中できない」「ミスが増えた」などの訴えが多く、本人も「気づいたらぼーっとしてしまう」と悩みを抱えやすい症状です。
注意障害がどのような状態なのか、どんな種類があるのか、そして日常生活でどのような対応が効果的かを、言語聴覚士の視点からわかりやすく解説します。
1. 注意障害とは?
「注意」と聞くと「集中力」のイメージが強いかもしれません。
しかし実際には、注意は複数の要素から構成される複雑な認知機能で、私たちが日常生活を円滑に行うために欠かせない能力です。
注意障害とは、脳損傷によってこの注意の働きが低下した状態で、以下のような状況が起こります。
- 作業中に気が散りやすい
- 物事をやり続けることが難しい
- 同時に複数の情報を処理できない
- 危険に気づきにくくなる
表面的には「だらしない」「やる気がない」と見られてしまいやすく、理解されにくい障害です。
2. 注意には4つの種類がある
注意は1つの機能ではなく、以下のように細かく分類されます。
① 持続性注意(集中し続ける力)
一定時間、同じ作業に取り組み続ける力のことです。
例:
- 会議中に話を聞き続ける
- 料理を最後まで作り終える
- 読書を続ける
障害があると…
- 作業が途中で止まる
- ぼーっとしてしまう
- ミスが増える
② 選択性注意(必要な情報だけに集中する力)
周囲に刺激がある中で、必要なものだけに注意を向ける力です。
例:
- カフェで友人の話を聞く
- 周囲が騒がしくても必要な作業を続ける
障害があると…
- 少しの音でも気が散る
- 会話を聞き取れない
- 作業が中断しやすい
③ 転換性注意(切り替える力)
1つの作業から別の作業へ柔軟に注意を移す能力です。
例:
- 料理しながら電話に出て、再び料理に戻る
- 会話中に話題が変わってもついていける
障害があると…
- 話題が変わると混乱する
- マルチタスクができない
- 次に何をすればいいかわからなくなる
④ 分配性注意(複数の情報を同時に処理する力)
二つ以上の作業を同時に行う能力です。
例:
- 歩きながら会話をする
- メモをとりながら説明を聞く
障害があると…
- 「ながら作業」が極端に苦手になる
- 作業の効率が大きく落ちる
3. 日常生活でよく見られる注意障害のサイン
注意障害のある方に見られる行動には、共通した特徴があります。
- 話を聞いていないように見える
- 必要な情報を聞き逃す
- 家事が終わらず、途中で止まる
- 忘れ物やミスが増える
- 危険に気づきにくい(車の音、段差など)
- 掃除や整理が進まない
- 何かをしている途中で別のことに気を取られる
本人の努力不足ではなく、脳の機能が低下していることが原因です。
4. 注意障害への支援方法
注意障害は適切な支援や訓練によって改善や代償が可能です。
ここでは家庭や職場で取り入れやすい工夫を紹介します。
① 環境調整
注意障害には、環境の整え方が非常に重要です。
- 静かな場所で作業をする
- テレビやスマホを近くに置かない
- 机の上は必要最小限の物だけにする
- 予定や作業を一覧で見える化する
周囲の刺激を減らすことで、集中しやすい環境を作れます。
② 作業の単純化・分解
作業を細かく区切って提示すると、達成しやすくなります。
例:料理の場合
- 野菜を切る
- 肉を炒める
- 盛り付ける
1つずつ終えることで成功体験が増え、混乱も減ります。
③ 注意訓練(専門職によるリハビリ)
言語聴覚士が行う注意訓練には以下があります。
- パソコン・タブレットを使った注意課題
- 聞き取り課題
- 並列処理の訓練
- 作業手順の学習
症状に合わせたオーダーメイドの訓練が重要です。
④ 外部補助手段の活用
- アラーム
- メモや付箋
- タスク管理アプリ
- ホワイトボード
これらを「忘れる前に使う」習慣づけがポイントです。
5. 家族が気をつけたい関わり方
注意障害は目に見えにくいため、家族がストレスを感じることも少なくありません。
大切なのは、叱責したり責めたりしないことです。
本人の努力不足ではなく、脳の機能の問題です。
- 1度に複数の指示を出さない
- 急かさず、ゆっくり話す
- 結果ではなく「できた部分」を褒める
- 予定やルールを共有し、見えるところに貼る
これらは家庭内の混乱を大きく減らします。
6. 注意障害は改善できる?
脳の回復には個人差がありますが、
- 発症後半年〜1年は改善が大きい
- 慢性期でも訓練・工夫によって生活しやすさは向上する
とされています。
また、完全に治らなくても、環境調整や補助手段をうまく使うことで十分に生活を整えることができます。
まとめ:理解と環境づくりが鍵になる
注意障害は、外から見てもわかりにくく、誤解されやすい障害です。
しかし、注意の仕組みを理解し、適切な環境と支援を整えることで、本人の「できる力」は大きく引き出せます。
周囲の理解と工夫が何より重要です。

